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第百二十章『霊界突入 獣人の少年』
最下層の守護神を倒したことで最下層の霊でこれ以上アーネットに手出ししようとしようとする霊はでてこなかった。それでもアーネットは一刻を惜しんで天界を目指して先を急いだ。虚ろのような世界が次々と現れてはきえていく、そんな螺旋構造の迷路に迷うることなくアーネットは導かれるように天界への道をひた走った。
とある瞬間から世界の境界が曖昧になり、黒ずんだ境界の隙間がなくなり、天から届く光が辺りを照らして、ついに現実空間と風景が変わらなくなった。それはおそらく最下層を抜けて中間階層にはいったからなのだろう。
妖怪のような巨木も人間ほどもある爬虫類も姿を消し、大地には牧草が生え川には透明な水が流れていた。
「これが中間階層なのか・・・・普通の人間界とこれでは見分けがつかないな」
アーネットはやや拍子抜けする思いがした。レイラが別れ際にアーネットに言った言葉のなかで、これより先では人はその精神性を試されます。と言っていた。ここまで人間界と同じということは、相手は表向き平静を装って近づいてくる者に違いない。そう思うと見慣れた風景のなかで近づいてくる者に疑心暗鬼にならざろう得なくなる。警戒感だけが増加していた。
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