第百二十章『霊界突入 獣人の少年』

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オヤジはムキになってアーネットにそう言ってしつこく金を狙っている。 だがその言葉はアーネットに暗い幼女時代の出来事を思い出させた。彼女の記憶に封印されていた言葉が、このオヤジと同じ言葉に触発されて記憶が蘇ってきた。それはアーネットが奴隷商に売られてペンダントを取り上げられた時の言葉だ。アーネットの顔色が変わったそして 「この金は誰がなんと言おうがあの少年のものだ。お前のものでも、ここの役人のものでもない。そしてあの少年が不当に奴隷として扱われることも私が許さない」 そう言ってアーネットは目を見開いてオヤジを威圧した。 「へっ、何を言ってやがるんだい。お前があのガキを助けるとでも言うのかい? そんなことできるもんかい、お上に逆らうことなんてできるもんかい」 「うるさい、いいからその汚い手をどかせ」 そういうと屈んでいるオヤジの横腹をアーネットは蹴り飛ばした。「グェー、ゲボッゲボッ」とオヤジは腹を抱えて動けなくなった。その隙にアーネットは少年の落とした小銭を拾い上げると、ずかずかと少年の捕らえられている檻になっている馬車へと歩いて行った。そして檻の中の少年の前へいくと 「お前の落とした小銭だ」     
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