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そして世理は無事第一志望の大学に合格し、今日高校を卒業した。
大学は通えない距離ではないけれど、一人暮らしも経験して自立したいと親を説き伏せて、大学の近くのマンションに住むのだという。だから、2年後マルオが大学に進学したらそこで一緒に住もうと言っているのだった。
はっきり言ってマルオにとって受験はまだ先の話だし、そもそも成績優秀者の世理と同じ大学に進むことなどできないのではないだろうか、また無茶なことをこの人は…と思う。
付き合うようになって、お互いを深く知ると意外な一面も見えてきたりする。とても大人に見えていた世理だが、案外子どもっぽい、ちょっとヤンチャな顔も持っていた。だが不思議なことにそこに幻滅することはなく、逆に可愛いとさえ思ってしまうのだった。ああ、先輩が前に言っていた『可愛い』はこういうことかと納得するとともに、ふふふっと笑みが溢れてしまうマルオだった。まさに痘痕も靨である。
もちろんマルオだってずっと世理といたい。
だが、まだ高校生の自分達にとって先のことは全くの未知だ。いや、高校生だからとかではなく、誰だって明日のことはわからないのだ。
自分の世理への気持ちがそう簡単に変わるとは思えないけれど、世理の気持ちがどうなるかはわからない。だからこそ2年も先のことを当然のように話す世理の気持ちを嬉しく思うし、ありがたいとも思う。
そうだ。先のことなど誰にもわからないのだ。
今から死ぬ気で頑張れば、世理と同じ大学に通うことも叶わない夢でもないのかもしれない。やる前から諦めていたら叶うものも叶わないのだから。諦めたらそこで試合終了ですよと言ったのは誰だったか。
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