意識

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夏休みに入り、コンクール予選は目前となった。 そのため練習にも力が入る。朝から夕方までみっちり組まれたメニューをこなす。 とはいってもマルオはコンクール予選の出場メンバーにはなっていないので、基礎練習をした後は裏方として支える。世理が、いや出場する部員みんなが全力を出せるようにサポートする。 思い込んだら一直線なところがあるマルオは、裏方だろうが何だろうが常に全力投球だった。そのおかげか、そもそもハードな練習でそれどころではなくなったのか、女子部員の恨みがましい視線を感じることもなくなり、マルオは益々練習にのめり込んでいった。 コンクール予選までは吹奏楽部員全員が、それこそ脇目も振らず一丸となって曲を仕上げることに取り組んだ。 マルオはみんなで同じものを目指し、協力し、叱咤激励し合う関係をとてもいいなと思う。その中に自分がいられることが誇らしく嬉しかった。そして、今年は控えだけれど来年は自分もステージに上がれるように、サックスをもっともっと頑張ろうと思うのだった。 基礎練習は相変わらず世理とマンツーマンで、微に入り細を穿つ指導を受けている。 その世理とは、夏休み前にお互いを『特別』な先輩後輩だと告げあったことで距離が縮まり、より安心感や連帯感のようなものが生まれていた。それに、この人なら自分をわかってくれるのではないかという気持ちも。 今まで外見でばかり判断されてきた二人だったから、共感するところが多かったのだろう。世理も同じように感じていたのかもしれない。 コンクール予選当日までは毎日が瞬く間に過ぎていった。
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