意識

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マルオの言葉に世理は一瞬目を見開いた後、ふふっと笑みを浮かべて言った。 「そんな風に言ってもらえるのは先輩冥利に尽きるな。中には鬱陶しい先輩がいなくなって清々するって思ってるヤツもいるかもしれないけどな」 「そんな! 俺はホントに寂しいです! 先輩にもっともっとサックスを教えてほしいし、一緒に演奏したいです!」 マルオは心外だと言わんばかりにまくし立てた。 「はは。わかってるよ。丸岡はホントにそう思ってくれてるってわかってる。ありがとな」 そう言いながら世理はマルオの頭を優しく撫でた。 「時間がある時は部活に顔出すよ」 世理の言葉にマルオは噛みつかんばかりの勢いで畳み掛ける。 「ホントですか!? 絶対ですよ!」 「うん、約束するよ、ほら」 世理の出した右手の小指をマルオはキョトンと見つめる。 「ほら、丸岡も小指出せよ」 小指を立てた右手をずいっとマルオの方に近づけながら世理が言う。ようやくマルオはああ、指切りをするのかと理解した。理解したが、高校生の男子二人で指切り? と、若干の恥ずかしさを感じながらも、自分も右手の小指を伸ばし、世理のそれにおずおずと絡めた。 「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます」 世理が楽しそうに歌いながら手を振るのに引っ張られてマルオも手を振った。 子供騙しな約束だけど、それでもマルオは世理との関わりがこれっきりになるわけではないのだと、そう捉えていいのだと、少しだけ安堵し嬉しく思った。
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