意識

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そんな厳しくも楽しかった合宿も終わり、大量の洗濯物を土産に帰宅しようという時に、ちょっと楽器店に寄って行かないかと水田に誘われた。マルオは、このまままっすぐ帰るのも寂しいなという合宿の余韻に後ろ髪を引かれるような思いもあったので、水田と共に駅前の繁華街にある楽器店へと繰り出した。 水田はトランペットや楽譜を見て回っている。マルオもいつかは自分で買いたいなとショーケースの中にあるサックスを眺めるが、値札を見てついため息を漏らした。高校生の自分のお小遣いでおいそれと買える値段ではない。バイトでもしてお金を貯めないとなぁとぼんやり思いながらサックスから目を離し、水田はどこにいるんだろうかと店内を見回した。 キョロキョロと水田を探して店の入り口の方に視線を動かした時、ちょうど入店してくる人影が目に映った。 店の外には、八月の後半に入ったとは言えども、まだまだ夏の光が溢れている。既に夕方になっていたけれど、それは視覚にすら暑さを訴えかけてくるような痛いほどに眩しい光だった。そんな光を背にした人影は完全なる逆光で顔が全くわからない。 だけど… そのシルエットを目にした瞬間、マルオの鼓動がドクンと跳ねた。 (…先輩……)
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