意識

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マルオは体が硬直してしまったかのように動けず、視線も縫いとめられたように動かせない。ただ木偶の坊のように突っ立ってその人影を見つめていた。 眩しい夏の光を後光のように纏い、光り輝いて見えるそのバランスの取れたシルエットを綺麗だと思った。目を奪われたままぼんやりと、本当に今更ではあるが、女子が騒ぐのも無理はない、先輩ってカッコイイんだなぁとしみじみ思った。 と、そう思った途端、更に心臓がドキドキと活発に動き出した。 (え? 何これ? 何か動悸が……心臓が痛いんだけど…どうしたんだ、俺…? あ、ま、まさか…熱中症とかか!? えっと、どうしたらいいんだっけ? あ、そうだ、水分だ! お茶だ! お茶飲もう!) 一人オロオロと、側から見たら挙動不審だろうに、そんなことを気にする余裕もなく、マルオは背負っていたリュックの外ポケットからペットボトルを取り出すと、キャップを取るのももどかしい思いでお茶をゴクゴクと飲み、ふぅ~と一息ついた。 少し落ち着きを取り戻したマルオは改めて視線を戻し世理のシルエットを見る。 ところが、お茶を飲んで落ち着いたかと思ったのに、落ち着くどころか更に激しくなっているのではないかというほどに心臓が脈打っていることを自覚してマルオはまた狼狽える。思わず右手で自分の左胸を押さえた。その掌にドクンドクンと鼓動が響いてくる。 (…俺、マジでどこか悪いんだろうか…) 自分の体調の変化に焦る。 と、世理の視線がこちらを向いた、ような気がした。 (あ、先輩が見てる、挨拶しないと)と思ったその時、「城山先輩!」と水田が駆け寄るのが見えた。 そんな水田の行動に、マルオは緊張が解けてホッとしたような、先を越されて悔しいような何とも言えない複雑な思いを抱いた。
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