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「叔父貴の店ね、基本はレコードでジャズかけてるんだけど、週末の夜にはライブをやったりもするんだ。俺もたまに参加させてもらうんだよね」
「…レコード?」
「そうそう、叔父貴の拘りっていうか、レコードが好きなんだってさ。針を落とす時の少しの緊張感とか微妙なノイズなんかも味があっていいらしい。丸岡はレコードで音楽聞いたことある?」
「ないです。俺ん家にはレコードなんてないし…。CDとかスマホくらいでしか聞いたことないです」
「だよな。俺だって叔父貴が持ってなけりゃ聞いたことなかっただろうし。な、レコード聞きに来ない? あ、やっぱ帰りたい?」
マルオの顔に困惑が浮かんでいたんだろう。世理が気遣うように聞いてきた。
「あ、いえ、そうじゃなくて…あの、俺、そういうところに行ったことないし…それに、合宿帰りで、持ち合わせが…」
恥ずかしさに消え入りそうな声でそう言うと、世理が
「ああ、なんだ。怖いところでもないし、俺も行くんだから平気だろ? それに俺が誘ったんだからご馳走するよ。とは言っても叔父貴の店だし、実は俺も払ったことなんてないんだけどな。今日も叔父貴にご馳走さまってとこだな」
あははははと世理は笑い飛ばした。
「だから、時間さえ平気なら一緒に行こうぜ」
言いながら世理はマルオの肩に手をかけた。マルオの鼓動がまたドクンと跳ねたが、世理はそのままマルオの肩を抱き、マルオを促すように歩き出す。ギクシャクしながらもマルオが釣られて歩き出すと、スッと世理の手は肩から離れていった。
(あ…)
世理の手が肩から離れたことに何故か寂しさを感じて、その手の行方を無意識に目で追っていた。
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