48人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうした? 丸岡」
見ると、世理が心配そうな顔でマルオを見ていた。
「ため息ついて…やっぱ行きたくない?」
「え?」
何を言われているのかわからなくて、マルオはキョトンと世理を見る。
「いや、ため息ついてるからさ。やっぱ行きたくないんじゃないかと思って」
世理の言葉に慌てて否定した。
「あ、いえ、違います! 先輩の叔父さんのお店、行ってみたいです」
「そう? 無理しちゃダメだよ?」
「無理なんてしてません。大丈夫です! レコード聞いてみたいし…」
「…なら、いいけど」
言葉とは裏腹に納得していなさそうな世理の顔を見て、更に慌ててマルオは白状する。
「あの、行きたくないんじゃなくて……先輩の手、見てたんです、羨ましいなって思って…。俺の手、ちっちゃいから…」
マルオは自分の手に視線を戻した。やっぱり小さい。またため息が出そうになった、その時、マルオの手が大きな温かい手で包まれた。
ドクン!
またもやマルオの心臓が大きく跳ねた。と同時に足が止まった。
呆然と立ち竦むその視界には大きな世理の手に包まれた自分の手が映っている。
マルオは言葉もなく見つめる。瞬時には状況が理解できない。
「どれ?」
言いながら世理がマルオの手を持ち上げる。
「まあ、確かに大きくはないな。ちょっと比べてみるか。丸岡、手、広げてみろよ」
世理がマルオの手と自分の手の大きさを比べている。
最初のコメントを投稿しよう!