意識

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世理の手と触れている指先までがドクンドクンと脈打っているようだ。 (やっぱり俺はどこかおかしいのかもしれない…) 世理は重ねた手の反対の手でマルオの手首を掴み、二人の手を重ねたまま上にしたり下にしたりしながら検分している。 「確かに俺より一回り小さいかな。でも女子と比べたら大きいだろうし、サックスの演奏には、支障はないんじゃないか?」 「…そ、そうですね…」 マルオは自分の心臓に静まれと言い聞かせながら答える。 「どうしても弾きにくいと思うなら、対処法はあるからさ。それと、運指に関しては、わかってるだろうけど鍛錬あるのみ!」 ニヤリと笑みを浮かべながらマルオの顔を覗き込んでくるが、未だ世理はマルオの手を離さない。それどころか視線をマルオの手に戻し、じっと見つめていたかと思えば今度は指の一本一本まで摘んだり撫でたりしている。挙句、更にマルオの手を繁々と眺めて 「それにしても…丸岡の手はプニプニしてて、触ってると気持ちいいな」 などと言うではないか! ここは駅近。人通りも多い。そんなところで男同士手を握り合っているなんて。人が見たら何と思うだろう。 マルオは慌てて世理の手を振り払い、両手を背中に隠すように回した。 「せ、先輩、こんなところでやめてください…。は、恥ずかしいです」 「ん? ああ、ごめんごめん」 「は、は、早く、行きましょう!」 言うなりセカセカと歩き出したマルオだったが、右手と右足が一緒に出てしまうようなぎこちない歩き方になってしまった。 「はいはい」 クスクス笑いながら世理も歩き出した。
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