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コーヒーを飲んで一息ついたところで改めて店内を見回す。壁やテーブル、椅子に至るまでふんだんに木が使われていて山小屋を思わせるような造りになっている。さらに、柔らかな間接照明が明る過ぎず暗過ぎずの空間を作っていた。それはお洒落でいながらどこか温かみがあり落ち着くものだった。
心地いい空間に心地いい音楽。それに…多分美味しいコーヒー。(多分、というのは、マルオにはコーヒーの美味しさがまだわからないけど、世理が美味しいと言っていたのだから美味しいのだろうと思う)
なんて素敵なところなんだろうとうっとりしていたマルオだったが、ピアノの反対側の壁一面が収納棚になっていることに気がついた。中央あたりにレコードプレイヤーがあり、それ以外の棚にはビッシリとレコードが並べられているようだ。そのうちの何枚かはジャケットが見えるようにディスプレイされている。
マルオの視線に気づいたのか世理が
「見に行ってみる?」
と聞いてきたのでマルオも
「はい」
と答える。
スツールから立ち上がりながら世理がマスターに許可を得た。
「ハルさん、音、変えてもいい?」
「おお、いいぞ。好きなの聞きな」
「サンキュー」
そして二人でレコード棚の前まで移動した。
「なんか聞いてみたいのある?」
世理に聞かれたけれどマルオにはどれがいいのかさっぱりわからない。
「えっと、よくわからないので…先輩のおススメありますか?」
「ん~、おススメか…。じゃ、先ずはアルトサックスといえばこの人って感じのチャーリー・パーカーにしようか」
そう言いながら、世理は棚から一枚のレコードを抜き出した。
「チャーリー・パーカーはアドリブが凄いんだ」
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