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思い返してみると、最初に動悸を感じたのは楽器店で世理に会った時だった。それから肩に世理の手が回された時。世理の隣を歩いていた時。世理に手を包まれた時……。
あれ? とマルオは思う。
先輩ばっかりだ、と。
マルオが動悸を感じたのはいずれも世理絡みな気がする。
もう一度マルオは考えた。
マスターを思い出す。
渋くてカッコいい人だったな。お店も温もりがあって居心地もよくて、素敵なところだった。マスターの人柄が表れているのかもしれない。
レコードで聞いたチャーリー・パーカーのサックス。
他にもたくさんのジャズを聞いた。トランペットやピアノもカッコよかった。
サイフォンで淹れたコーヒー。
魔法みたいで面白かったな。コーヒーの味は今ひとつわからなかったけど。
オムライス。
赤と黄色のコントラストが綺麗で、それにとても美味しかった。
どれも楽しい記憶で、思わずふふふっと笑顔になるけれど、ドキドキすることはない。
あれ? これはどういうことだ? とマルオは考え込む。
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