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その後も休み時間になるたびに、いや下手したら授業中でも女子からの視線を感じていた。チラチラチラチラとマルオのことを盗み見ている。マルオはイライラと落ち着かない。
それでも近づいてはこないのは、さっき冷たくあしらったからかもしれない。それは少しの救いだ。
昼休み、マルオは購買に来ていた。女子たちの視線から逃れるというのもあるが、一番の目的はパンを買うことだ。母が作ってくれたお弁当はあるものの、減ってしまった体重を戻すには、やっぱり食べるしかない。そう結論付けてのことだ。とにかく早く太らなければ、とマルオは強く思っている。
だが、昼の購買は当然だが激混みだ。身長も高くなく、体重も、多分だが随分落ちてしまったであろうマルオは人の波に押されてあっちへフラフラ、こっちへフラフラしてしまい、なかなかパンを手にすることができない。惣菜パンにするか菓子パンにするか。それすら決めきれずにいる上、どっちも手が届かない。
人混みの中、右往左往するマルオの上に声が降ってきた。
「丸岡? パン買うの?」
声の方に顔を向けると世理が立っていた。
「城山先輩!」
「何買うの? 取ってやるよ」
思いがけない世理との遭遇に、マルオの心がまたもやドキンと跳ねた。
「先輩…」
マルオが何と言おうかとマゴマゴしていると、世理の陰から他の声が聞こえてきた。
「え? なになに? 城山君の知り合い?」
「え? どれどれ? あら、可愛い!」
「誰? 何年生の子?」
「私も見たい!」
「私も!」
「私もー!」
世理の横にニョキニョキと顔が出てきた。4~5人はいるだろうか。いや、マルオからは見えないだけでもっといそうだ。そして、見事に女子ばかりだ。
女子に囲まれた世理を目の前にして、さっき跳ねたマルオの心がドンと重くなった。軽くポーンと弾んだキラキラのスーパーボールが、突然どうにも持ち上げることのできない鉛の球にでもなったようだった。
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