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「丸岡、何が欲しいの?」 再度世理が聞いてきたが、マルオは答えることができなかった。喉に何かが詰まってでもいるかのように言葉が出てこない。そればかりか磁石の同極同士が反発し合うように、反射的にクルッと回れ右をして、そのまま歩き出してしまった。そしてその勢いのままに世理から遠ざかる。 「丸岡…?」 驚いたような世理の声が背中に届いたが、マルオは足を止めることなく出口に向かう。 「何あれ?」 「せっかく城山君が優しく聞いてるのに態度悪~い」 「ほんと感じ悪い!」 「下級生のくせに生意気!」 「何様のつもりよ!」 「城山君、あんなのほっといていこいこ」 世理を囲んでいる女子生徒からの言葉がマルオに追い打ちをかけた。 マルオは走り出していた。 マルオにだってわからない。何故、自分は世理に返事もしないで逃げ出すように離れたのか。 教室まで全力疾走で戻ったマルオはドサっと自分の席に座った。ハァハァと肩で大きく息をしながらも頭の中ではさっきの映像がぐるぐる回っている。 購買まで行ったのに結局パンは買わずに戻ってきたから、お弁当だけでも食べないと。それも、さっさと食べなければ午後の授業開始に間に合わなくなる。なのにマルオはうなだれたまま考え込んでいた。
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