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改めて両手のパンを見てマルオはハッとした。世理にお礼さえ言っていない。いくら突然のことだったとは言え、先輩にご馳走になってお礼も言っていないとは、なんと失礼なことか。 それに… 購買での自分の態度は、どう考えてもよくはなかった。いや、よくはなかった、なんてものじゃない。先輩に対して失礼極まりなかった。なのに世理は怒るどころか心配し、パンを買ってわざわざ届けてくれたのだ。しかも奢り。 世理への申し訳なさや居たたまれなさがぐわーっとせり上がってきた。なんで俺はさっき、あんな態度を取ってしまったのか。先輩はこんなに優しいのに、俺は何をしているんだと猛省した。 だが一方で、購買での状況を思い出すとまたモヤモヤと不快感が込み上げてくる。何故だ…。世理がマルオに対して酷いことをしたわけでもないのに何故か気持ちが塞ぐ。不可解で不条理だ。 最近のマルオは自分に関してわからないことだらけだ。 マルオはふぅと小さくため息をこぼすと頭をゆるゆると左右に振った。不可解で不条理なモヤモヤを頭の中から締め出したかった。 そしてもう一度両手にあるパンを見る。 考えることはいろいろあるが、今マルオがするべきことは、世理がマルオのために買ってきてくれたパンを食べることだと思った。世理が買ってくれたパンを粗末に扱うわけにはいかない。 マルオはモソモソとパンをかじった。 パンを食べながら、マルオは購買でのことをちゃんと謝ろうと心に決めた。それとパンのお礼も言わないと。
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