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「よし、行こうか」
「あ、あの、先輩…」
再び歩き出そうとした世理をマルオは慌てて引き止める。
「ん? どうした? まだ何かある?」
世理が不思議そうに見つめてくる。その視線を正面から受け止めきれずに、マルオは思わず俯いた。そしてゴニョゴニョと言う。
「あの…あの、すみませんでした」
「え? 何が?」
「あの、えっと、昼間の購買で…俺、凄く失礼な態度を取ってしまって…」
「え? ああ、購買ね。なんか理由があって急いでたんだろ? 気にしてないよ」
理由…モヤモヤと得も言われぬ不快感が込み上げてきたので…なんて言えるはずもなく、マルオはどう答えたらいいのかわからない。黙り込んだマルオを見て世理が続けて言った。
「それとも…ひょっとして俺がなんかやらかして丸岡を怒らせた?」
その言葉にマルオは慌てて顔を上げる。
「そ、そんな! そんなことあるはずがありません! 俺が先輩を怒るなんてあり得ません! 俺の方こそ…態度悪くて先輩に怒られても仕方がないのに…」
「いや、俺は怒っちゃいないし、丸岡も怒ってないならそれでいいじゃないか。な?」
世理は両手でマルオの肩をポンポンと優しく叩いた。
「…はい。でも本当にすみませんでした」
もう一度はっきり言って頭を下げた。
「うん、わかった。もうこれでおしまいな。さあ、ハルさんも待ってるだろうし急ぐぞ!」
「はい」
二人並んで『subtone』へと急ぐ。
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