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先ずは世理に謝ることができてよかったと一人胸をなでおろしたマルオだったが、世理はどうだろうか。本当に気にしていないのだろうか。ホッとしているのは自分だけではないのか。やっぱりまだ少し気になってしまう。マルオは隣を歩く世理の横顔をこっそり盗み見た。 確かに見た感じ怒ってる様子はない。いや、それどころか口元が緩んでいるように感じられる。 もう少しよく見ると目尻も下がっているようで、気のせいかウキウキしているようにも見える。 (あれ? 先輩なんだか嬉しそう?) マルオがそう思っていると世理が喋り出した。 「実はさ、今月最後の週末にハルさんとこでライブがあるんだけどさ、俺も演奏させてもらうんだよ」 そう言うと世理は、抑えきれないといった感じの笑みをこぼした。 「ライブ?」 マルオが聞き返すと 「そう、ライブ! ピアノとシンガーのライブなんだけど、俺も何曲か一緒にやらせてもらう事になったんだよ」 「そうなんですか」 「だから、今日はその打ち合わせ」 世理はフンフンと鼻歌でも歌い出しそうだ。 マルオはライブを見たことがない。どんなものなのかさっぱりだが、世理のサックスは聞きたい。世理が部活を引退してから、世理のサックスは聞いていない。聞きたい、聞きたい、聞きたい。 「先輩のサックス、俺も聞きたいです!」 「おう! ライブ見に来いよ」 世理はチラッと横目にマルオを見て、少し照れたような笑みを浮かべた。
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