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更に小学生の頃、妹に 「郁ちゃんがお兄ちゃんなんて嫌!」 と拒絶された。 母親が、お兄ちゃんになんてことを言うのよと諌めても妹は頬っぺたを膨らませて言葉を続けた。 「だって男子が意地悪言うんだもん。お前の兄ちゃんホントに男なのか? って。女みたいな顔してんじゃんって。お前より可愛いんじゃねーの? って。詩美(うたみ)だって可愛いねって言われるのに…郁ちゃんより詩美の方が可愛いもん。ね? お母さん、そうだよね?」 と、母親に同意を求め、挙げ句の果てには泣き喚いた。 「郁ちゃんと一緒に学校行くの嫌! 兄妹って思われるの嫌! 絶対、絶対、いやーーーー!!!」 とは言っても小学校は集団登校だからどうしても同じ班で行かなければならない。それでも嫌がる妹とは最前列と最後列に分かれて歩いた。マルオは妹の後ろ姿を見つめながら、なんで? 俺が何したって言うんだよ、と誰にぶつけたらいいのかわからない憤りを感じていた。 年齢が進むにつれてはっきりと拒まれることはなくなっていったが、妹との間に微妙な空気が流れているのは否めない。 姉には遊ばれ、妹には嫌がられる。それは全て自分の見た目のせい。マルオが望んでそうなったわけではないのに。マルオにはどうにもできないことなのに。思わず両親を恨みそうになる。なんでこんな顔に生んだの? と。それこそ両親にもどうにもできないことなのに。それでもマルオは自分の見た目が嫌だった。
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