展開

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その後のマルオは、さっきまでのことはすっかり忘却の彼方で、ウキウキと『subtone』へ向かった。 頭の中は「ライブ」と「先輩のサックス」でいっぱいだ。足は今にもスキップしそうだし、思わずふふふと笑みもこぼれてくる。もうライブが待ち遠しくて仕方がない。今月最後の週末と言わずに明日にでも、いや、今日、今からでも聞きたい。 あ、でも、ライブを楽しみに、それまでの日々をワクワク過ごせるから、それもいいなと思い直す。とにかく今からバイトだ。ちゃんと仕事をしないと。 と、気を引き締め直した直後に、ああ、やっぱ先輩のサックス楽しみだ、と思わず相好が崩れるマルオだった。 抑えきれないウキウキ気分のまま、カランとカウベルを鳴らして店内に入ったマルオは 「おはようございます。遅くなりました」 と頭を下げた。 カウンターの中からマルオを見たマスターは 「おはよう、今日もよろしくな。ん? なんか楽しそうだな。いいことでもあったか? 」 と微笑んだ。 マルオの後ろから店に入ってきた世理も 「ちわ~」 と軽く手を挙げる。 マスターはそれに「おう」と応えると 「世理、来てるぞ」 と、ピアノの方を親指で指した。 「サンキュー」 世理はそのままピアノの方へ移動していった。 マルオは従業員控室に荷物を置き、エプロンを着けてバイト態勢に入る。
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