怒涛

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モヤモヤを抱えたまま『subtone』を出たマルオは、地上への階段を上り切ったところで一息ついた。この息と一緒にモヤモヤも体の外に出ていけばいいのにと、マルオはぼんやり空を見上げた。 マルオが店に来た時には明るかった空ももうすっかり暗くなり、ポツリポツリと星が瞬いている。九月も終わりに近くなると、さすがに夜は少し涼しい。もう一度大きく息を吐いてから、駅に向かって一歩を踏み出そうとしたところで階段の下から声をかけられた。 「丸岡!」 マルオが振り返ると世理が階段を駆け上ってくるところだった。 目の前に立った世理が「これから打ち上げやるんだけど、丸岡も来ないか?」と、マルオを誘った。 「え? …いえ、でも、俺は、関係者でもないですし…」 「そんなことないだろ? ここでバイトしてるんだし、俺の後輩だし、関係有り有りだろ?」 「え、いや、その……」 「帰りが遅くなるのが心配? だったら大丈夫。ハルさんが送ってくれるって言うし。な? だから、いいだろ?」 ここまで世理に言われたらマルオは断れない。 「わかりました。ちょっとお邪魔します」 「ちょっとじゃなくていいから」 世理は嬉しそうに笑っている。 マルオは燻り続けるモヤモヤと共に再び店へ続く階段を下りた。
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