怒涛

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店内に戻った世理とマルオに 「世理! どこに行ってたのよ? 乾杯するわよ!」 という朱里の声が飛んできた。朱里はもうTシャツとジーンズに着替えていた。 「悪い悪い。丸岡が帰ろうとしてたから捕まえてきた」 「なんですって! 郁実君は私に無断で帰るつもりだったの? それは許せないわね」 言うなり朱里は世理とマルオの間に滑り込んできた。そして右手を世理の左腕に、左手をマルオの右腕に絡めると、そのまま二人を引きずるようにピアノの方へと連れて行く。 「ハルさん、この二人にも飲み物をお願い」 「ほい。そいつらは未成年だからこれな」 そう言ったマスターがカウンターに置いたのはティーソーダだった。 「さあ、二人ともグラスを持って!」 その言葉と共に朱里の腕から解放された世理とマルオはグラスを取る。 「みんな、飲み物は大丈夫ね?」 周りをぐるっと見回して朱里が言う。陣さん、マスターの他にも何人かいて、全部で10人くらいの人がいた。どうやら朱里と陣のジャズ仲間の人もいるようで、マルオの知らない顔もあった。 「じゃ、いくわよ! みんなお疲れ様~! おかげでいいライブができたわ! 今日は美味しいお酒が飲めるわよ。かんぱ~い!!」 グラスを掲げて朱里が音頭を取った。 「かんぱ~い!」 「乾杯!」 みんな思い思いに乾杯している。マルオはどうしたらいいのかわからずにグラスを持ったまま立ち尽くしていた。 そんなマルオに世理がグラスを近づけてきた。 「丸岡もお疲れ様。ありがとな」 カチンとグラスとグラスが触れ合う音がした。 「お疲れ様なんて…すみません……あの、先輩こそお疲れ様でした」 「ん? だってバイト疲れただろ? 今日はお客さんも多かったし」 「でも、先輩のサックス聞けたし…」 「そっか」 世理は楽しそうにティーソーダを飲んでいる。
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