怒涛

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マルオがゴシゴシ擦った頬をさすりながら世理が呟いた。 「朱里のヤツ、何考えてんだか…。ホントごめんな」 その言葉にマルオはまたもやモヤっとしてしまう。なんで先輩が謝るんだろう…。先輩が悪いわけでもないのに。朱里の代わりにという感じで世理に謝られると、何だか嫌だった。 「…先輩は、朱里さんと長いお付き合いなんですか…?」 そんな言葉が、思わずマルオの口から溢れていた。 「え?」 世理の反応にハッとしたマルオは「あ、いえ、何でもないです」と、慌てて取り消した。 だが世理は少し考える様子を見せてから答えた。 「長い付き合いっていうか、まぁ、生まれた時からの付き合いだな」 「…そんなに長いんですか……」 「まあな」 「…そうなんですか……」 何だろう、この敗北感は。マルオは自分が落ち込んでいるのを感じた。 「朱里が気になる?」 世理に聞かれたマルオは、そうなんだろうかと考えたが、どうも違う気がする。気にはなっているが、それは朱里のことというよりも……。答えに到達する前に更に世理が言った。 「朱里はダメだよ」 少し強い口調だった。それは、暗に朱里は自分のものだと言っているんだろうか。やっぱり先輩と朱里さんは…そう考えてマルオはますます落ち込む。 「朱里みたいな女は丸岡には合わないと思うよ。勝ち気で男勝りで言葉もキツイし」 先輩ならいいんだろうか。先輩は勝ち気で男勝りで言葉がキツイ人でもいいんだろうか。そう思うとズブズブと底なし沼にでも落ちていくような気分になった。もがけばもがくほど深みにはまっていくように、もう浮上できないんじゃないだろうか…。そんな想像をしてしまい、余計気分は落ちていく。
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