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「あの朱里の相手ができるのは、ホントに陣さんだけだよ」
そうなのか、やっぱり、先輩……えっ???なんて…?
マルオは大きく見開いた目をパチパチと瞬いた。
「えっと……陣、さん……?」
「ああ。朱里のお守りは陣さんにしかできないよ」
「え…」
「陣さんはホント凄いよ。大人だよ。なんてったって、あのじゃじゃ馬朱里を公私に渡って面倒見てるんだから、尊敬するよ」
「あの……」
「ジャズピアニストとしても引っ張りだこなのに、何を好きこのんであの朱里といるんだか」
世理は訳がわからないとでもいうように首をゆるゆると左右に振りながら続ける。
「いや、朱里もさ、シンガーとしての実力はなかなかのもんだと思うよ。だけど、あの性格がなぁ…」
お手上げとばかりに肩を竦める世理だった。
マルオには世理が何を言っているのか、さっぱりわからない。きっと頭の上だけでなく顔の真ん中にもクエスチョンマークが大きく浮かんでいたんだろう。そんなマルオの様子を見た世理が意外そうに言う。
「ん? あれ? 言ってなかったっけ?」
何を? マルオはキョトンとしたままだ。
「 陣さんは朱里の音楽のパートナーで尚且つ旦那さんなんだけど…」
……………………………
暫しの沈黙の後、マルオの脳が世理の言葉の意味を理解した。理解したが、
「えええええっ!?」
マルオは軽くパニックに陥っていた。
「えっと、えっと、あれ? あの…じゃあ、朱里さんと先輩は…生まれた時からの付き合いって……」
「ん? 俺と朱里?」
コクコクとマルオが頷く。
「ああ、俺が生まれた時からの付き合いだな、それは間違いない。朱里は絶対女王的存在として俺の前に君臨してるよ。俺は下僕みたいなもんだ」
そこまで言ってから世理はフッと何かを諦めたかのような笑みを浮かべた。
そして
「なんせアネキだからな」
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