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「それは、どうしても話してはくれないのか?」
マルオは小さく頷いた。でも世理だって、はい、そうですかと引き下がれるわけもない。
「そりゃあ、俺が話を聞いたところで解決はできないかもしれないけど…でも、一緒に考えることはできると思うんだけどな。それでもやっぱりダメ?」
少し強く言う世理に対して、マルオはまた小さく頷くだけだった。
頑ななマルオに世理はやや落胆した様子で呟いた。
「そんなに俺は頼りないのかな」
世理の言葉にマルオは焦る。世理に心配をかけているという心苦しさはあるものの、でもどうしても、その世理には言えない秘めた思い。マルオは途方に暮れて言葉に詰まる。それでも何とか、世理に原因があるわけではないのだということだけは伝えたかった。
「……先輩が頼りないとか、そういうことでは、ないんです…。でも、でも…」
「それでもどうしても俺には言えないってことなんだろ?」
「す、すみません…」
「なんでなんだよ」
「………」
「前はいろいろ俺に話してくれただろ? なのに、なんでなんだよ!」
「………」
ついつい声が大きくなってしまったが、それでもマルオはギュッと唇を結び何も言わない。
想像以上に頑ななマルオの様子に、世理は自分の無力さを感じ、どうにもならない苛立ちを抑えきれなかった。マルオに対して苛立ったわけではない。自分の不甲斐なさに憤ってのことだったが、その違いはマルオにはわからないだろう。マルオは自分の言動が世理を怒らせたと受け取ったのかもしれない。
そしてそのまま会話は途絶えた。再び無言になった二人で歩く駅までの道のりは、途轍もなく長い長い距離に感じられた。
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