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第一話
なんだか、すごく懐かしい夢を見た。
もうずっと忘れていたぬくもり。
優しいあなたは……。
だあれ?
*
もうすぐクリスマス。
街はすっかり華やぎモードに突入して、ジングルベルが鳴り響いている。
私はいつもの通り、出勤のためバスに乗り込んだ。
学生とサラリーマンで混雑する車内。
私はその一角で、妙なものを目にした。
それは一人の男性だった。
背がすらりと高くて、まるでモデルみたいなスタイルのよい男だった。
着ている服もなんか変わっていて、白いワイシャツに結構奇抜なデザインのダークスーツ。
だけど、私の関心を引いたのはそのスタイルや衣装だけではなかった。
なんか、この男、どうやら私を見ているようなのだ。
しかも、何このひと……朝っぱらからサングラスなんてかけて……でも、ちょっと……素敵かも……。
あうっ!!いかんいかん。私にはもう大切な人、いるんだから。
私がそう慌てて視線を逸らそうとした瞬間。
「えっ……?」
笑った?
この人、私のこと見て……笑った。
なんで?
やだ……なんか、気味悪い……。
いったい……なんなのよ……。こいつ……。
私はなんだか釈然としないまま、停留所で降りた。
*
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