送迎

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送迎

 デイサービスの施設で送迎の仕事をしている。  この辺りの区域は利用してくれる家が多くて、近所で数人を迎えに行くようになっている。  まずは信号脇の家のおばあちゃん。もう少し行った先のおじいちゃんと、二軒隣のおじいちゃん。その後は、角を曲がってすぐのおばあちゃんを乗せてこの付近はおしまいだ。  いつものように三人乗せて、車を走らせ、角を曲がる。  四人目に乗せるおばあちゃんはデイサービスの施設が大好きで、いつも玄関の所に立って、ニコニコ顔で迎えが来るのを待っていてくれる。  今日も、いつも通り玄関先にその姿が見えた…ところで思い出した。  そういえばあそこのおばあちゃん、一週間前に突然自宅で倒れて、そのまま病院で亡くなってたんだった。  施設にも連絡が入り、送迎のルートから家を外していたのに、つい癖で前のルートをそのまま走ったんだ。  まあ、ルート変更をうっかり忘れていたのはいいとしても、あそこに立っているのは誰だろう。  あのおばあちゃんに年の近い姉妹が入るって話は聞いたことがないし、お嫁さんはあからさまに顔が違う。そもそもあんなににこにこ顔で、車に手まで振っている人が全くの見ず知らずの筈もないし…。  本当は、見かけちゃいけない存在だよな。でもいかにも迎えを待っているのに、通りすぎたらまずいような気がしいならない。  ああ、どうしてうっかりルート間違いをしちゃったかな。  あの家に前に止まりたくない。でも、今更引き返せない状態で、送迎バスはゆっくの家の前に進んで行く…。 送迎…完
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