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私たち二人は静かにお辞儀する。やはり反応はない。
「これ、どうぞ。あとこのお年玉全て父さんに使って。私のことはいいから!!」
私はさっき買ってきた花を母親に渡す。それと同時に彼女にお金を渡す。
「いいの?」
「うん、だって大切な父さんだもん……でもやっぱり動いてよ!!」
「深優ちゃん……」
キレ気味の私に正義さんはなだめる。
「ごめん」
私の言葉に父親は涙を一筋流していた。その涙を見て私は話を続ける。
「一番つらいのは父さんだよね?なのに私は……」
「深優。父さん、笑ってるわよ」
「ホントね」
父さんが静かに笑ったその顔を私は脳裏に焼き付けた。そしていつの日かまた家族で再開するのを楽しみに祈りながら、病室で三人でそれぞれの話を父親に聞かせてやるのだった。愛情は金では買えないが、代えることができる。そう、私たちのお年玉のように。
~おわり~
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