お年玉は愛情の裏返し

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 目をつぶった拍子に流れ落ちたのだろう。生暖かい涙が私の目から零れ落ちた。そして後ろにいた二人の男の参拝客に私が立ち去ろうとしたら見られてしまった。 「うわっ、参拝で泣くとかまじありえねぇ」と一人の茶髪の男が言う。 「おい、聞こえるだろ?神に響けばなんでもいいだろ?」  黒髪の男の声を聞きながら私はその場を去った。その言葉に胸の鼓動が高まってしまった。父親にもあの頃、同じように言われたからだ。私の横に立っていた父親が階段を下りる時にこう聞いてきた。 「深優ちゃんは神様に何を願い事したのかな?」 「お年玉の金額があがるように」 「はぁ?あなた、そんなもん神ぃ……」  母親の口調が止まったかと思うと、父親は自分の唇に人差し指を付けていた。そして私たちに聞かせるように言う。 「お祈りなんて神に響けばなんでもいいだろ?」 「んまぁ、そうね。あなたの心に苔が生えますようにでもね」 「いや、それはちょっと……というかもしかしたら君たちのおかげで生えてる気がするんだけど」 「環境破壊はおやめなさい」     
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