お年玉は愛情の裏返し

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 あの後、父親が魂抜かれたかのように神社の出口を目指していたのが懐かしく感じる。私は出口を出てある場所を向けて歩き出す。そこは機械に通帳とカードを入れてお金を取り出したり預けたりする銀行だった。お年玉を始めてもらった日はいつだろう。覚えていない。でも私がこの銀行にそのお年玉を貯めていたのがいつだったか覚えている。私が二十歳の時だ。成人になった時に両親から講座を開いてもらえた。そしてそこにまず入れたのは今まで貯めていた貯金箱の中に入っていたお金だった。私はあんなお祈りをしたのにも関わらず、お年玉には一切手を出してなかった。お年玉は特別な何かだと思っていたからだ。いや、何かではない。お年玉は愛情の裏返しなのだ。だから残したくなったのだろう。そして私はお年玉の代わりにおこづかいで何とかやり抜いてきた。そのお金を今回、病院にいる父親にその金でプレゼントを与えようと思ったのである。  機械の案内に沿ってお金を取り出して銀行の外に出た。ちゃんと前を向いて歩いてなかったらしく入ってくる人にぶつかってしまった。 「ごめんなさい」 「すみません」  男女の口から発したその言葉は絡み合っていく。しかしどこかで聞いたことあるぞと思って目の前を見ると私と同様に頭をなでてる先ほど参拝に来た男だった。 「なんだよ、祈り泣き虫女か」 「私で悪かったですね?ふん」 「責任は取ってもらうよ?」  急に目の前の男に腕を握られて引っ張られる。力を入れて抵抗するも効果はなかった。近くの自動販売機に連れて来られる。私は直感した。この男に何かされるのだと。お金が目的?なら今私の財布にあるお金をあげれ……るわけないじゃない。せっかく貯めた愛情とお金なんて。 「ねぇ、お金はやらないから……その……私の体にして」 「何も奪わないよ。むしろ与えるよ。なんかの縁だろうしな。これ飲んで心も体も温まりな」  彼は私にあったかいココアを自動販売機から買って私に渡す。 「ありがとうございます」 「んで、深優ちゃんも里帰り?」  私は急にそう言われたので口に含んでいたココアをダイナミックに吐き出してしまった。 「何で私の名前を?」     
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