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タララン、タララン、タンタンタンタンタン
夢の中に沈んでいた意識を突如鳴り始めた人工音によって呼び戻される。俺は人工音の元である目覚まし時計を止め、まだ視線が定まらない目をこする。
しばらくして、ベッドから起き上がり二階の自室から1階にある洗面所に向かって階段を降りていく。誰もいない一階に降りると流石に後悔する。土地が安いからって一人暮らしで二階建てにするんじゃなかった。
そして、洗面所に着くと、まず水で顔を洗い時間をかけて歯を磨く。鏡に写る自分を見て思う。この家には「おはよう」という言葉がないということを……最後に家でこの言葉を言ったのは20年前に実家を出た日が最後だった。誰も返してこない挨拶はいずれ誰も言わなくなる。それが言うだけで虚しくて無意味な物に思えてくるからだ。だから今日も「おはよう」という言葉はこの家では聞こえない……
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