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全ての準備が整い終えると俺は靴を履き家のドアを開ける。そして今日も……
「行ってきます」
誰に言うわけでもなくただ今日も誰もいない家にこの言葉を告げて家を出て仕事に向かう。そして夕方、家に帰宅すると……
「ただいま」
俺がそう告げても「おかえり」という返事はない。この家には「おかえり」は存在しない。それが何とも物悲しくて家という名前の中身のない小屋だと思い知らされる。もうこんなのたくさんだ……もっと温かみのある家に帰りたい……
それから1年後……
タララン、タララン、タンタンタンタンタン
「もう朝だよ。夕」
「まだ眠いよ……もう少しだけ……」
まだ目を瞑ったまま寝ている夕の身体を揺らす。だが、それでも夕は起きない。仕方がない……あの手を使うか……
「おはようー!!夕ー!!早く起きなさいー!!」
耳元で近所迷惑になるほどの大声で叫んだ。すると、夕は天井に頭をぶつけんばかりに飛び起きた。俺はいまだに鳴り響く目覚まし時計を止め、夕を見つめる。夕は一気に現実に引き戻されたようなまだ眠そうな目をしていた。
「おはよう、お父さん」
「うん、おはよう。夕、早く顔を洗って来なさい」
返事をする夕に洗面所に行くように言うと、夕は諦めたように洗面所に向かっていった。
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