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夕……それは返事のないこの家に絶望してから俺が引き取った養子の小学生の男の子。当時、夕は孤児院に預けられていて、それを里親という形で引き取り家族になった。今は昔ほど人見知りはしない良い子になったけど、でも何か引っかかるような気がする……それが何なのか分からないけど……
顔を洗い終えた夕と朝御飯を食べ終えると、食器を片付ける暇もなく夕は学校に行く。
「お父さん、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
俺は学校に行く夕を玄関で送り出す。俺が求めていたのはこれだと幸せを噛み締めた。そして、二人で食べた食器を片付けてから、俺も仕事に行く。
「行ってきます」
相変わらず誰も返事が帰ってこないけど、それでいい。だって……
「ただいま、夕」
「おかえり、お父さん」
だって、俺には帰ってきた時に夕が「おかえり」って言ってくれるんだから……それがとてつもなく幸せで、一年前まで何もなかった空っぽだった家が今では夕と暮らす夢の空間ように思えてくる。本当にありがとう、夕……
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