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だが隣の人はとても嬉しそうに笑う。手を差し伸べられ、それに従えば人前でも絡めるように手を繋いでくれた。
「では、俺がエスコートしてもよろしいか?」
「え?」
「少し夢だったんだ。こうしてエスコートするのが」
隠しもせずにそのように言われ、驚きながらも嬉しく微笑む。返すように柔らかな視線を向けられると、やっぱりドキッとした。
「朝食は食べてこられたか?」
「いえ」
「食べない派なのか?」
「普段は食べなければ身が持たないのですが、安息日は。出来ればその分を寝たいという誘惑に勝てないのです」
気恥ずかしい話だが真実だ。食欲よりも睡眠欲が勝ってしまって、休みの日は意地汚く寝てしまう。実は今日もギリギリまで寝てしまった。
アレックスは素直に笑う。そして、不意に髪に触れた。見ていると、小さな声で「癖が直りきっていない」と言われた。途端に恥ずかしくて頭を抑えたが、余計に「くくっ」と笑われるばかりだった。
「今朝は辛くはなかったか?」
「少し寝坊をいたしました」
「それでも来てくれたのは嬉しい。そうだな、次はもう少し遅い約束をしよう」
責めるでもなく、受け入れてくれる。それにオリヴァーは顔を赤くして頷いた。
「それでは腹が減っているだろ。嫌いな物はあるだろうか?」
「あまりありませんが…あえて言うなら生臭い物が苦手です」
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