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年齢は二十代の中頃。仮面をしているが見目は良さそうで、何より精悍な感じがする。疲れたように首を回し、オリヴァーには気づかず同じテラスへと向かってきている。
素早く仮面をつけたオリヴァーは、月の下へと身をさらした。
「こんばんは」
穏やかに声をかけると、男はビクリと体を震わせて止まった。
「失礼、先客がいたとは知らず」
「構いません。よろしければ少し、お話などいかがでしょう?」
誘いかけると男の口元が柔らかく笑った。瞳はずっと穏やかで、黒い髪がサラリと揺れた。
男がオリヴァーの隣に移動して、テラスの縁に身を預ける。 案外背が高く、スラリとしている。
だが、初めて見る男だ。とはいえ、しばらくこの夜会に参加していなかったから、その間に入った人かもしれない。
「私、オリヴァーと申します。よろしければお名前を伺いたいのですが?」
問いかけると、濃紺の瞳が僅かに大きくなり、次にはふわりと柔らかくなる。そしてとても丁寧に礼をされた。
「失礼いたしました。俺はアレックスと申します」
「アレックス殿、ですね。この会には以前から?」
「いや、今日が初めてだ。特殊な趣向の夜会に参加するのが趣味で、興味本位だったのだがいまいち。見ていて痛々しくてならなくて」
「SMの趣味があるのではなくて?」
思わず問い返すと、アレックスは苦笑して曖昧に首を傾げた。
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