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「否定もしないが、そうした趣味を試した事はない。ただ今日のは、見ていても哀れに思えてな。青年の怯え方が酷く、とても気持ちいいとは見えなくなってしまって出てきた」
アレックスの苦笑がどこか嬉しい。感覚的に同じものを感じてくれたように思えて嬉しく、オリヴァーは彼の手を取っていた。
「貴方もそう思いましたか! あぁ、久しぶりに会話が出来そうなお相手に巡り会いました。私も今日はあまり楽しめずにがっかりしたのです。辛い、嫌だという感情ばかりが押し寄せるようなショーでは気持ちよくなれなくて。もう今日は諦めようと思っていた所なのです」
ついつい熱っぽく語ってしまい、ハッとしてアレックスを見る。
これで大抵失敗する。相手に引かれてしまったのではこの後なんてない。
だがアレックスは驚いたものの拒絶の意図はなく、ションボリと肩を落としたオリヴァーを見て笑ってくれた。
「同種が少ないと、共感出来る者に出会った時の感動はひとしお。苦労されているようだ、オリヴァー殿」
そう言って笑いかけ、同調してくれた事が嬉しい。オリヴァーは微笑み、そっと仮面を外した。
アレックスは明らかに息を呑んだように思う。それくらい、オリヴァーの顔立ちは良い。
女性的な美と儚さを持ち、憂いのある瞳は誘い込むようだと言われる。これで女性なら王族すらもたらし込める、なんて嬉しくない評価を貰ったほどだ。
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