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オリヴァーの趣味
僅かに春を感じる陽気も、夜ともなれば隠れてしまう。
安息日前日の夜、美しい装飾を施した紫の仮面を取ったオリヴァーは、落胆の溜息をついた。
「今日はよくありませんね」
少し前に起こった東地区の事件が数日前に解決したばかり。気持ち的に沈み込む事もあり、気晴らしに趣味の夜会に参加した。
ここは同じ趣味を持った人々の集まり。仮面をつけ、身分を明かさず楽しむ場所。
オリヴァーも名前以外は明かさずにいる。黒い制服を脱ぎ、白のタイトなスラックスとジャケット、ドレスシャツに薄紫の蝶のピンを止めている。
仮面も同じだ。薄い紫に鈍い金の縁飾りをした、どこか蝶を思わせるデザインの仮面は彼の愛用品。気分的に相手を求めている時に好むものだった。
本日の趣向はSMを交えたストリップ。舞台の上で熟練の調教師が若い青年に鞭を打ち、たっぷりに愛撫と言葉で責め立てて快楽を煽り、上り詰めさせていく。
だが今日は青年のほうがダメだった。極端に痛がり、涙と悲鳴で悲壮感を出していたが、それが萎えた。
官能的であるほうがよく、痛みに恍惚と艶を出してくれないと燃えない。オリヴァーにとって大切なのは、溢れ出る色香や艶なのである。
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