プロローグ

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「今日観測するはずだった、北極星とどっちが明るいだろう。」 闇に包まれた山の中でここだけが異常に明るい。 燃え盛る炎は、自分はここにいると派手な主張をしているように見える。 山男がキャンプファイヤーをエンジョイしているだけなら、どんなに良かっただろうか。 これは、まぎれもなく火事である。それも先程まで自分達が秘密基地として利用していた倉庫だ。 白色の四角い無機質な倉庫が赤く色づいている。 窓ガラスの代わりに張り付けた段ボールが徐々に小さくなっていく。 小さな人影が倉庫を中心にして走り回る、灼熱の炎に照らされた暗澹としたその表情は今でも夢に出てくる。 異様な光景の中、俺はただ黙って見ていた。 星野結衣が自殺した七年前のことは、このほかに記憶がない。一部分だけパズルのように抜き取られている。 「質が悪い、これでは完成しないではないか。」 自分の半分もない、小さな背中に大人たちは言う。 小さな背中は、抜き取られたピースを探すが一向に見つからない。 区々たるピースを集めようとする中で、もう一つ失ったものがある。 鏡に映る自分。この障害の影響でもう三年は自分の顔を見ていない。 あの日、なぜ彼女は自らの命を絶ったのか、この疑問と俺は生きてきた。 しかし、今、目の前にいる少女によってその疑問の一章をめくるきっかけが生まれたかもしれない。
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