くすり指

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 流石に警戒するが、美香は目の前でみずからのくすり指をさわって見せる。美香は昔から人の胸の内を覗き込むことが得意だったことを思い出す。 「仕返ししてみない?」  私はこの簡潔な言葉で落ちた。  空を見上げると雨が降りそうだった。私はスマホをネットに繋ぎ銀行の残高を見つめる。まだ満足いくだけの額はない。  私は美香に電話を掛けた。 「飛び込みの客を回してほしいんだけど」  私はホテルの風呂で浅黒い肌をした若い男の背中を洗った。始めは三十を大きく超え、太り始めたこの体に需要があるものかと悩んだ、だが今は遠い昔の話だ。 「こんなおばさんで大丈夫?」 「肉付き悪いと反応悪いから」  若い男は私の指輪に気づき指を絡めてくる。 「外しましょうか?」 「人妻シチュが最高に燃えるんだ。そのまま握ってよ」  私の愛撫に若い男が毒気を吐き出す。白濁とした体温が指に絡みつき、夫が興味を無くした輝きに男たちが征服欲を満たす。  私は二人目の男と別れて家に帰ってきた。 傍らでスマホにメールが入る。付き合いで遅くなる。夫からの短いメッセージだった。  私は携帯を操作し明日の予定を調べた。  リビングのテレビで台風のニュースが流れていた。大雨に流された民家が濁流に飲み込まれて行く。     
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