1章

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山道。刺すような寒さ広がる冬の日。 空が晴天の青から黄へ雲がまっさらな白から赤へ変わる夕刻の時間。 つい先月までは山を彩り秋のにおいを運んできてくれていた葉も 枯れ果て皆地面に横たわっていた。 私はそれを構わず踏みつけ一刻も早くあの場所へ向かうためひたすら歩いた。 暫く歩いていると道のわきにポツンとある祠が見えてくる。 周りに人影はなくひっそりと静まり帰っている。 まだ彼女は来ていないらしい。 あともう少しとより一層足を速め一気にその場所へと歩を進める。 祠の場所へ到着し改めて周りを見渡してみるがやはり彼女の姿はない。 それもそうかと祠の隣に座り込み彼女が来るまで待つ。 5分もたった頃だろうか、かさっと落ち葉を踏む音が聞こえてきた。 私は反射的にその方向を向きその姿を確認する。 胸のあたりまである黒く艶のある髪に白く透けそうな肌、 銀杏のような薄黄色の着物に少しボロくなった紫色の袴を着たひどく華奢な少女。 それは私が待っていた彼女だった。 彼女は私の顔を見ると口元に品の良い笑みを浮かべ軽口をたたく。 「お前はいつも早いのぉ今日は私の方が先だと思ったのに」 そういった彼女の隣へ行くため私は立ち上がる。 「こういうものは男の方が待つものだよ」 そう言いながら細く骨ばった手を取り もう少し上に行くとある大きい祠のある場所までゆっくりと手をつなぎ歩き始めた。 いつだったかどうせいつもそこに行くのであれば待ち合わせを そこにすればいいのではないかといったことがあるのだが 一緒に歩く時間も楽しいのだといって結局はそのままあの場所での 待ち合わせが続いていた。
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