1章

3/13
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
他愛もない話をしながら少しゆらりゆらりと歩いたところで だんだんと目的地への道が開けてくる。 一番上にまでたどり着くとそこはポツンと 一つ大きい祠とその近くに一つ大きな石が あるだけのだだっ広いだけの場所であった。 すると彼女は握っていた手をすっと放し先に私たちが 椅子として使っている石に一目散に走っていく。 これは毎回のことではあるので特に驚くこともない。 むしろよくも毎度毎度ここからあそこまでの短い距離を 走ろうと思うものだと飽きれるくらいだった。 やれやれと私が変わらぬ速度でゆっくりと 足を進めているとせかすように先に座っている彼女が手招いてくる。 その愛くるしさに変な気を起こしそうになるのを寸前で止め彼女のもとへ向かう。 「あまり急かさないでくれ。私ももう若くはないのだから」 「何を言うかまだまだ若造のくせに!ほら早く座れ座れ」 そういって自分の隣をトントンと手でたたきここに座れと催促する。 はいはいと彼女の言うとおりに隣に座ると満足したような顔をこちらに向けた。 こうした表情を見ていると本当に子どもといるような感覚になる。 プラプラとばたつかせている足もニコニコと心の底から笑う その顔も無邪気な子供そのものだ。 だがそれを一度本人に行ったところ子どもじゃないと 派手に怒られたので今は口には出さないでおいた。 確かその時に彼女が自分よりも年上なんだと豪語していたが どう見ても自分よりも年下の少女にしか見えない。 人間見た目じゃわからないものだ。 いや、彼女はきっと人間ではない。 おそらく本来この世のものではないものなのだろう。 それは初めから薄々感じてはいたがいまだ彼女に伝えられずにいる。 それを伝えてしまったらもう二度と会いないような気がしてならなかった。 「…聞いておるか?陽一?」 突然顔を覗き込まれて一瞬息が止まる。 「え…?や、あ、あぁごめん何か言ってたのか?」 完全に考え事をしていて全く話を聞いていなかった。 覗き込む彼女の目から視線を少し外して言い訳を考えてはみたものの 彼女の性格上ごまかせばその分面倒なことになるのは わかっているので結局隠すことなく正直に伝える。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!