1章

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するとまんまるな目がキッと吊り上がり小さい足で 私のすねの横あたりを何度もかんかんと子供のように蹴ってくるのだ。 「お前はなんでこう話を聞かんのじゃ! せっかく一緒にいられる短い時間じゃというのに!!」 きっと彼女は自分が今どれほど恥ずかしい事を言っているのか気が付いていないのだろう。 なお私のすねあたりを蹴り続けている。 …これまたいい反撃材料をもらってしまったなぁ 思わずにやけそうになる口元をこらえ 彼女の方へ身体を向かせる。 いまだ私の足元に気が取られているのか少し 下を向いている顔を軽く包みこちらを向かせる。 「すまない。だがまさか君がこの時間を そんなに大切にしてくれているとは思わなかったよ。」 じっと彼女の目をまっずぐみてつぶやく。 実はこの言葉には少し嘘がある。 私は彼女が一日のうちのこの数時間を何よりも 大切にしているのはとっくに気が付いていた。 ただまさかこんな形で伝えられるとは思ってもいなかったが… そしてその何とも可愛らしい抗議に変わったこの言葉に 思わず意地悪をしてみたくなったのだ。 その結果、案の定その言葉を聞き真っ赤になって 黙りこくる彼女は本当に可愛らしかった。 「まぁ冗談だけどね」 すっと彼女から手を放しまた前へ体を向ける。 ちらっと少しだけ目線だけ改めて向けると さっきの表情とは違い少し涙目になっている彼女が映る。 …やばいやり過ぎたか 少し茶化すつもりがどうやらやりすぎてしまったようだ。 どうにかこの場を収めようと彼女の前へ座り手を取った瞬間 みぞおちに突如衝撃が走った。
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