1章

7/13

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
彼女はきっと人間ではない。 そもそも私が彼女を疑い出したのは 彼女と出会って少し経った頃だった。 私自身生まれてからもう20余年とこの村に住んでいるが 彼女らしき人物を村で一度も見たことがなかった。 これはどうも少し変だと村の者に さりげなく聞いてみても誰も心当たりがないような返答だった。 きっと何かある。 そう思っていたころ丁度私があの山に入ろうとするのを見かけた 村のじぃさまから忠告としてこの村に伝わるとある鬼の話を聞いたのだ。 昔この村で一番の金持ちの一家が殺される事件が起こった。 殺されたのは当時当主だった男。 この事件は不可解な事件としてすぐに村中に広まることとなった。 というのも男が殺された夜、いくつか奇異な点はあったのだが 何より不可解だったのは彼の死体には刃物などで 切られたような跡はなくその代わりに何かに食いちぎられたような 穴だらけで見るも無残な状態になっていたことだった。 村の者はすぐに魔物の仕業だと口々に噂し その噂は瞬く間に村中に広がることとなった。 そしていつの間にかその魔物というのが あの家に嫁いだ女なのではないかとまで噂されるようになっていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加