死神の名刺

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「上等だな。その前にお前が本物の死神であることを証明してくれれば嬉しいんだが」  俺はバーテンが出してくれたウィスキーグラスに口をつけた。  今度は死神が笑う番だった。俺は口元を刺すチクリとした痛みに顔を歪める。よく見るとグラスのふちにカミソリが仕込んであるではないか。  俺はバーテンにクレームをつけようとした。 「無駄ですよ」  死神が指を一つ鳴らすとグラスのふちについた血がすっと酒のなかに落ち金魚に化けた。  金魚はグラスのなかで苦しげに泳ぎ回り、赤から黒に体の色を変えると、ウィスキーグラスの水面に浮かび上がってきた。 「この遊びはあなたが死ぬまで続きます。もしギブアップを申し入れることが御座いましたら当方までお電話を下さい。直通のダイヤルは語呂合わせで、落ちろ、落ちろ、地獄に、落ちろ、となっておりますので……」  死神はそう言うと俺の胸ポケットに名刺を押し込みその場から消えてしまった。  その刹那、腕に斧が振り下ろされた。俺は慌てて手を引き難を逃れる。  攻撃をしてきたのはバーテンだった。いつの間にか仮面をし顔が見えなくなっている。  殺す気か。店の入口を見た。逃げられそうにない。そこにも仮面をつけた男たちが立ち手に斧を持ってこちらの様子を伺っている。     
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