死神の名刺

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 こいつら何者だ。俺が首を切った会社の連中だとでも言うのか。考えても仕方がない。仮面の向こうにただならぬ殺気を感じる。  俺は足元の椅子を掴むと仮面の男たちに投げつけた。今だ。隙をついて店のトイレに駆け込むと即座に鍵を掛け籠城を決め込んだ。  だが奴らは許してくれない。手に持った斧を使い力ずくで扉を切り刻み始めたのだ。警察を呼ぶか。だがそれまで身が持つだろうか。  持たない。俺は諦めると名刺と携帯を取り出し死神に侘びを入れることにした。 「落ちろ、落ちろ、地獄に、落ちろ。026‐026‐2592‐026……」  唐突に俺の手が止まる。この番号にダイヤルすると死んでしまうのではないか。奴はこの遊びは死ぬまで続くと言っていたのだ。  辺りを見渡すと個室の壁に麻雀天国と書かれたシールが貼られていることに気づいた。  これだ。俺は自分の幸運を信じ、携帯電話に思いつきの番号を打ち込んだ。 「1059‐1059‐1059‐255」  電話は上手い具合に繋がった。 「はいもしもし、天国、天国、天国にゴーゴー、天国商会の天使ちゃんで御座います」  俺は電話口に聞こえる女の声に向かって必死に頭を下げた。 「いま、死神の呪いに追われて大変なことになっているんです。大至急助けてもらえないでしょうか?」     
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