殺人ダイヤル

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殺人ダイヤル

『殺人ダイヤル、十万円で殺し承ります。電話番号×××………』。  街の電柱に貼られていた紙を頼りに、うっ積した顔で携帯電話のダイヤルボタンを押して行く。数度の呼出音の後、受話器の向こうから低くて渋い男の声が聞こえて来た。 「……はい、もしもし殺人ダイヤルです」 「あの私、殺してもらいたい人間がいるんですが……」 「相手はどのような人物でしょうか?」 「詐欺師です。ずっと信じていた親友にこの絵は必ず高く売れるからと八百万円も騙し取られてしまったんです」 「なるほど絵画詐欺にかかったわけですね」 「私はもうほとんど無一文なんです。だけどあいつだけは絶対に許すことができない!」  事務所の床に座り込み涙をこぼすと鼻水をすすり上げ迫真の演技を見せた。俺の仕事は詐欺専門のルポライターだ。まずは相手の懐に飛び込まなければならない。 「一度、そちらの会社にうかがっても宜しいでしょうか?」 「私どもは裏稼業故、お客様には顔を見せられない決まりになっておりますので……」 「しかし私は詐欺で大金を無くしているんですよ。会ってもらわなければ信用をすることができないじゃありませんか!」  想定内の反応に粘り腰で対抗してみる。     
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