殺人ダイヤル

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 ズドン! 電話の向こうからピストルを撃つ音が聞こえた。 「どうです? 素人なんてイチコロですよ」  こけおどしの玩具の銃だと言うことは直ぐに解った。だがそこは駆け引きである。 「……本物の銃ですか。これは心強い。早速、契約に入りたいのですが」 「ではまず始めにタレコミ防止の為に、お名前と住所をお聞かせ下さい。次にターゲットの写真をメールでこちらに送って頂きます。折り返し口座番号をお教えしますので」 「解りました。それで、殺しはいつやって頂けるのでしょうか?」 「入金確認後、直ぐに実行に移ります。仕事が終わりましたら電話で連絡致しますので」 「そうですか。いい知らせを待っています」  俺は安心したフリをして男の指示に従った。  典型的な依頼料の持ち逃げ詐欺だと言うのは解っていた。だが注意喚起の体験談を雑誌に載せるのもルポライターの仕事だ。  俺が指定の口座に金を振り込むとすぐさま入金確認のメールが返って来た。  念のためターゲットの住所を間違ったフリをして男に電話を掛けてみた。案の定、もうすでに圏外。電波の届かないところにいるので電話は繋がらなくなっていた。     
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