第1章

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春奈が中学校の同級生達と副都心の繁華街でショッピングを楽しんでいる時だった。 突然! 「春奈ーーーー!!」と大声で呼びかけられる。 声のした方を見た春奈の目に、何時も春奈をギラギラした目で舐めまわすように見つめる担任の山本の姿が映った。 山本はズカズカと春奈に近づき、「春奈! 俺と一緒に死んでくれーー!」と叫びながら、大きなナイフを振りかざして切りかかってくる。 春奈の繊細な心臓はその恐怖に鼓動を止めた。 倒れ込む春奈に構わず、山本はナイフを春奈の身体に突き立てようとする。 止まった筈の春奈の心臓が「トクン」と鼓動を再開、ナイフが身体に刺さる寸前春奈は素早く動く。 右手で山本のナイフを持つ右手の手首を押さえ外側に押し、左手で山本の右腕の肘関節を固定して前に押す。 山本の足を払い前方に倒れ込ませて、山本の右腕に自分の体重を全て乗せ背中側に倒した。 地面にうつ伏せになった山本の右腕の肩関節は、バキ! と音を立てて外れる。 山本を押し倒した春奈は素早く立ち上がり、右足で股間を力一杯蹴り、続いて左足の革靴の踵を背骨の腰椎に叩きつけた。 その一連の動きを一瞬で終えた春奈は不思議そうな顔をして周りを見渡し、自分の手や着ている服を撫で回す。 彼女の無事を喜ぶ声や、暴漢を倒した事に対する賞賛の声を発している同級生を含む周りの人達に、彼女は問う。 「此処、何処?」 彼女は、肩の関節を外され腰椎を折られ睾丸を潰され泣き叫ぶ山本より先に救急車に乗せられ、病院に搬送された。 病院に駆けつけた春奈の家族に医師は、恐怖で記憶喪失になった可能性があると告げる。 春奈は暫く容体を見るため入院した。
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