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スマホの相手がゴウガミだと気付かれることなく、最優先事項だけを簡潔に伝えたヒドウが「それでは……」と通信を切ろうとした瞬間だった。
シャワールームの扉がガチャリと開き、腰に白いバスタオルを一枚巻いたアザミがのっそり現れたのだ。
「おーい!ゴウ!俺のパンツ知らねぇ?」
とっさに「バカ!」と口パクで叫んだゴウガミが、軽く拳を二回ノックするように動かしてから指を四本立てる。
指の本数で、着信時に画面に出ていたヒドウの班員ナンバーを知らせたのだ。
0、0、4……ん?ゴウが手にしてるのは、俺の携帯……ヒドウか!
ようやく状況を理解したショックで、アザミのバスタオルがバサッと床へと落ちた。
やれやれという表情のゴウガミが、額に手を当てながら律儀に目をそらす。
「ゴウ、ちょ、ちょっと代わってくれ!」
「……もう通信切れてるぞ……アザミ班からの着信だったから、使用された薬物の件でモグリ先生から言い忘れがあるのかと思って出てしまった。すまん」
気まずそうな表情でゴウガミが携帯を渡すと、バスタオルを拾って腰へ巻き直したアザミが苦笑いしながら受け取った。
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