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自宅のリビングで通話を終えたカギヤの背後から、大きなサイズの長袖Tシャツをワンピースのように着たマリネが、ふかふかの白いバスタオルで髪を拭きながら現れた。
マリネの小悪魔的な性格を知らない人間であったら、湯に温まって頬を染めた少年にも少女にも見える可愛らしい顔と、シャツからスラリと伸びた美脚にドキッとしてしまうだろう。
「僕は、鬼崎室長が一番怪しい人物だって思ってたんだけど、班長のフェロモンに全然反応しなかったって話だった。しかも綾子さんに惚れこんでいたんだってさ」
「ん~そうだったスか。班長が言うなら間違いないスね。ボクの捜査項目どうするス?鬼崎室長関係スけど、変更するスか?」
「鬼崎室長の身辺捜査は一旦止めて、綾子さんのスマホの件は引き続きで。まだ班長が動いてくれるみたいだったから、それに合わせて僕からもお願いするね」
「ん~分かったス」
都心に近い2LDKのマンションに、カギヤは単身で生活をしている。
広さはアザミの自宅と似たようなものだが、明るい色調で統一されたインテリアや自炊で活躍する数々の台所用品などが、温かみのある生活空間を作りだしているという点は大きく異なると言えるだろう。
さらに洋室の一つは完全にカギヤの趣味と実益を兼ねて使用されており、おびただしい量の鍵や錠前、関連部品がタイプごとに分類され、整然とした倉庫のように管理されていた。
鍵には全然興味がないマリネだが、美味しい手料理が食べられて、片付けも掃除も洗濯も何もしなくていいカギヤの自宅が「ただの食堂代わり」に留まらず「ただのホテル代わり」になると気付いてしまい「作戦の間、いちいちカギヤさんに連絡するの面倒ス」と必要な機材を持ち込んで、今日の昼間から勝手に住みついてしまったのである。
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