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一ヶ月に渡る「96」の作戦をヒドウと共に完遂し、上官への報告も終えたカギヤは、ヒドウと別れたその足でお気に入りの純喫茶に立ち寄ったのであった。
約半年前、偶然この店の前を通りかかったカギヤは、小さな喫茶店の看板に目が釘付けになった。
純喫茶「キーホール」
キーホール、つまり鍵穴である。
なんて素晴らしい店名なんだろう……きっと、コーヒーも美味しいに違いない。
カギヤ以外の人間には訳が分からない理論だが、気さくなママたちとレトロモダンなインテリアに囲まれ、落ち着いた雰囲気の中で飲むコーヒーは確かに美味しかった。
それ以来、任務のない非番の時にカギヤはこの店に立ち寄り、今ではすっかり常連になっている。
カギヤが、ずっと気になっていたことをママに質問した。
「ここの店名『キーホール』の由来って何からなの?もしかしたら鍵穴は一つずつ形が違うから、まるでこのお店にくるお客さんのそれぞれ違った人生のようだとか……」
「あら、素敵!それ深くていいわぁ!今後お客さんに店名の由来を聞かれたら、そう答えさせてもらうわねぇ!」
「え?違うの?本当は?」
「ふふ、アタシの名字なの」
表面に小さな輝く星のデザインが入れられた昭和レトロガラスを使用した窓の外では、西陽が商店街をオレンジ色に染め始めたようだ。
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